労働霊魂

 

 

伏見で酒を飲むと17種類が一気に出てくるそれを3セットも飲むともう意識も自我も無く初詣に来た筈のわたくしはいつのまに極寒の山道に命こと切れ105年が経ちたましいは地面に染み込み山の一部と溶けたそうしてふわふわの尻尾を持つ一匹の頼り無い白狐と成ったわたくしは毎朝セッセと街へ降りてはタクシィドライバァとして観光客を其れらしい場所へ運搬しおこずかいもとい酒飲み代を稼ぐ日々を送るのだったしかし近頃更々ツケがまずい上に仲間にはもうアテが無い労働を増やそかなと思う現在すこし考えているのはひと目で夢ごこちになってしまった街の金閣寺よりもずっと豪華絢爛キラキラ宿場それとこれはいちばんのあこがれ隣の大都市のユニバァサルスタヂオジャぺンという桃源郷である此処からは少々遠いが週末のみならそう問題は無いだろう人が集まるにぎやかでたのしい場所というのはやはりよいものだ出来るならその様な場所でなるだけ長く御世話になりたいと思う勿論神への御勤めもきちんとしているが在れは多くの労働御狐達によるシフト制でだいたい二週間前にお休み希望を出せばよいのでいちばん融通が利く今は未だ掃除やおみくじ御守り授与ばかりだがやはり本業を忘れてプロは成らないいつかあの大きく立派な凛とした狛犬の御役目をするという大きな野望も密かに有る器あるわたくしは死んだが今の生活もそう悪くないわたくしのたましいは此れからもごくたのしく過ごしてゆくだろう何より酒が飲めればわたくしはほくほくとうれしい限りなのだ