夢日記

 


‪夢の中の上野という場所は 崖の途中にあり 全体がひとつの荘厳な神社だった  最上部から滝が‬流れ‪ 急勾配な崖を超えると △△区 (地図上は豊島区と板橋区の間) だった

 

崖の上には  せ 駅  という名前の駅があって 暗闇の中で単線電車が動いていた  たくさんの人がホームで蠢いていて 乗客が大勢いることがわかった この電車がどこへ向かうのか見当をつけた それはとても果てしない場所のように思った

そうしているうちに次第に朝日が昇り始め 駅は分厚く降り積もった雪の中にあり 目の前が海だということがわかった 朝日で駅全体はダイヤモンドダストのように輝き 美しさに圧倒された

影のようなカメラマンたちが 必死に風景にシャッターを切る中 彼らに倣いiPhoneで撮影した ‬

私は 人の視線をずっと感じていた  気づくとふとそばに男性がいた 私たちは無言だったが 自然に寄り添い歩き出した


‪私たちは水族館に着いた  そこは 冷たい海に住む白い生物しかいない場所で ひんやりとした水槽のガラスは 結露で濡れていた

透明で巨大なイカが大暴れしながら 真っ白な巨大グソクムシを ひと口で食べていた 美しかったが 災害を思わせるような怖さがあった  職員がグソクムシを救出するのをヒヤヒヤと眺めた

彼とは口を使うこと無く まなざしだけで会話した


‪水族館を楽しみ 再び崖に戻ると 彼が もう会えない 行かなくてはいけない と訴えていることを悟った  理由はわからなかったが どこか遠くへ行ってしまうような気もしたし 命が長くないような予感もあった

とてもつらかったが 涙は出なかった 絶対に泣いてはいけないと思った

私たちは 別れ際すら言葉を持たなかった 彼はただ優しいまなざしを向けてくれた しばらくして ひとりで再び駅の方へ向かって行った 彼はあの単線電車に乗るのだとわかった

初めて 自分に口がないことに気がついた 唇のあるべき場所はつるつるとして 何もないことが 触らなくてもわかった しかしそれは 取るに足らないことだった

 

私は彼に敬意を表し 喪失を必ず乗り越えると自分に誓った 行ってしまった方向を見つめ とても楽しい時間をありがとう と心で言った

私は 彼がいなくても 東京の そしてそれ以外の 神社や 駅や あの水族館のような美しいさまざまな場所へ これからも赴き その姿をたくさん見つめてみようと思った  至る場所の美しい瞬間に 彼の断片は落ちている そんな予感がした